消費者の気持ちに入り込む

ブランド・リレーションシップのマネジメントで、もっとも大切なのは、消費者の視点から考えるということです。消費者(あるいは顧客)の視点から考えることは、マーケティングの基本です。しかしブランド・リレーションシップのマネジメントではその大切さが、さらに強調されます。ブランドとの関係は「愛着」や「絆」という言葉でまとめられるほど、単純なものではないからです。

たとえば人々は、どのようなブランドに「私らしさ」を感じ、共鳴するのでしょうか。おそらく、小さな子供を育てる母親の「私らしさ」と、ビジネスで大成功した人の感じる「私らしさ」とはまったくちがうものでしょう。

私らしさが違えば、愛着や絆を感じるブランドも変わってくるはずです。誠実なブランドに親近感を抱く人もいれば、洗練されたブランドや刺激的なブランドに共鳴する人もいます。

また消費者は、そのブランドをどのように位置づけているでしょうか。親友のような存在でしょうか、幼なじみでしょうか、それとも頼れる相棒でしょうか。消費者とブランドとの関わり方はきわめて多様です。

最近の研究によると、ブランドを自分らしさを形成したり提示したりするための小道具(props)として認識することによっても、自らの経験や感情を分かち合ってくれるパートナー(partner)として認識することによっても、 ブランド・リレーションシップは形成されます。しかも多くの場合これら2つの側面は複雑に混ざりあっています。ブランドとの関係は「リレーションシップ」のひとことで片付けられないのです。

ブランド・リレーションシップのマネジメントに取り組むには、消費者の気持ちになり、彼らに入り込もうという姿勢が必要でしょう。消費者の気持ちに入り込むということは「どうしたら売れるのか」というマーケティング的視点をいったん捨て去ることです。そうすることで、消費者とブランドとのデリケートで複雑な関係が見えてくるはずです。